松本清張5・・・「黒革の手帖」

ここで初の上下本に挑戦しました!

舞台は銀座。

主人公はいわくつきの銀座のママ。元ベテラン銀行員。店の開業資金は銀行で横領した金。

専属速記者・福岡隆さんによると、

「松本さんの小説に出てくる女では、バーのマダムやホステス、二号さん、小料理屋の女中といった、過去に何らかの暗い翳を持つ女性が鮮烈に描かれている。素人でも婚期を逸した意地悪な中年女などの描写は最も得意である。こういう女たちが登場してくると会話も生き生きとしてくるし、その心理描写も巧みで、体臭がじかに伝わってくるような感じさえする」

「逆に清純な女性の恋愛を描くのはどうも苦手のようである。松本さん自身が過去にそういう恋愛体験を持たなかったことによるものであろうが、特に穢れを知らない天真爛漫な上流階級の女性になると、苦心して描いても何かつくりものになってしまう。血の通った人間が出てこない」

この主人公・元子は33、4で、まさに清張の得意な人物です。15年も銀行に勤めていながら、あっというウルトラCで職場に迷惑かけまくって退職、そのお金で銀座のクラブのママになります。

それにしても、元子の事業拡大意欲は私にはよくわかりませんでした。結局それがあだになるんですが、よっぽど銀行員のときに刺激がなかったんでしょうか。欲をかかなければよかったのに・・・

「黒革の手帖」も何度もドラマ化されています。時代も変わったのになあと思うんですが、舞台が夜の銀座で、華やかかつ闇が深い笑

おまけに女性の性格がはっきりしていて対立軸も明確。それゆえ細部は変えつつドラマ化が繰り返されているのでしょう。

でも、最近撮ったドラマは私は見ないと思います。銀座の魔力というか、あそこが大人の街、金と権力を握った男、その男の生き血を吸ってる女たちの街だったころはとうに過ぎました。

繰り返しますが、主人公の事業拡大の動機がよくわからないので、余り共感できません。元子が銀座という魑魅魍魎のばっこする街そのものの狂言回しだと思わないと、読後感が悪いままです。

 

ふう

「黒革の手帖」・・・女と猫は、上を目指すにゃ!

 

 

投稿者プロフィール

古波蔵ふう香
古波蔵ふう香
猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。