子猫たちは、いつの間にか周りを取り囲まれていました。
「さっきはよくも恥をかかせてくれたね」サビ猫が言いました。
サビ猫は、茶色と黒の毛がまだらに混ざった汚い柄のメス猫でしたが、それが妙な凄みにもなっていました。
さっきの仕返しに来た!チビは震えがとまりません。
キー子は落ち着き払って、ついっとチビとクーの前に歩み出て、サビ猫の正面に出て行きました。
「この公園はあたしたちが餌場にしてるんだよ。初めて来た奴が好き勝手してもらっちゃ困るんだよ。」
他の猫もぐるりと周りを囲んで、逃げ場がありません。
ただ、個人主義の猫らしく、「サビの姉御が子供相手にムキになって」「みんなの前で恥をかかされたものだから」という嘲笑の声もちらほら聞こえます。
喧騒の外れで、どこかから大きな黒猫がやってきました。
「なんだあの騒ぎは。」
「あっ、クロさん。サビが腹をメシの恨みで腹を立てて。」側近らしい猫が答えます。
「子供相手にか」黒猫は呆れた顔で、しばらく事態の成り行きを見守っていました。
キー子はじっとサビ猫の方を見ていて、何を言うかと思ったら、ふと視線を外して、優雅に毛づくろいを始めるではありませんか!
そのふてぶてしさに周りの猫からどよめきが上がり、一気に緊張感が高まります。
「私が話してるのに、その態度は何だよ!」
「用事はそれだけ?」キー子はしゅっとサビの方を向きました。
「な、何言ってるんだい!お前はここのルールってものをわかってない!わからしてやろうか!」
「腹ペコだったから食べただけ!おばさん、もう帰っていい!?」
「いいぞ!キジトラ!」「負けるな!」キー子の見事な反撃に猫たちは拍手喝采、やんやの大騒ぎ、サビの怒りは頂点に達しました。
猫の喧嘩っていうのは、1対1で行われ、睨み合って相手を威嚇して、一瞬の隙に相手を引っ掻くという、時間もかかるし、精神的に疲れるものです。
サビ猫とキー子の戦いが終わったころには、もう日はとっぷり落ちていました。
植栽の陰にキー子は横たわり、チビとクーが必死に介抱していました。
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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