ふうちゃん物語(5)サビ猫の逆襲

 

子猫たちは、いつの間にか周りを取り囲まれていました。

「さっきはよくも恥をかかせてくれたね」サビ猫が言いました。

 

サビ猫は、茶色と黒の毛がまだらに混ざった汚い柄のメス猫でしたが、それが妙な凄みにもなっていました。

 

さっきの仕返しに来た!チビは震えがとまりません。

 

キー子は落ち着き払って、ついっとチビとクーの前に歩み出て、サビ猫の正面に出て行きました。

 

「この公園はあたしたちが餌場にしてるんだよ。初めて来た奴が好き勝手してもらっちゃ困るんだよ。」

 

他の猫もぐるりと周りを囲んで、逃げ場がありません。

 

ただ、個人主義の猫らしく、「サビの姉御が子供相手にムキになって」「みんなの前で恥をかかされたものだから」という嘲笑の声もちらほら聞こえます。

 

喧騒の外れで、どこかから大きな黒猫がやってきました。

 

「なんだあの騒ぎは。」

 

「あっ、クロさん。サビが腹をメシの恨みで腹を立てて。」側近らしい猫が答えます。

 

「子供相手にか」黒猫は呆れた顔で、しばらく事態の成り行きを見守っていました。

 

キー子はじっとサビ猫の方を見ていて、何を言うかと思ったら、ふと視線を外して、優雅に毛づくろいを始めるではありませんか!

 

そのふてぶてしさに周りの猫からどよめきが上がり、一気に緊張感が高まります。

 

「私が話してるのに、その態度は何だよ!」

 

「用事はそれだけ?」キー子はしゅっとサビの方を向きました。

 

「な、何言ってるんだい!お前はここのルールってものをわかってない!わからしてやろうか!」

 

「腹ペコだったから食べただけ!おばさん、もう帰っていい!?」

 

「いいぞ!キジトラ!」「負けるな!」キー子の見事な反撃に猫たちは拍手喝采、やんやの大騒ぎ、サビの怒りは頂点に達しました。

 

ふう

 

猫の喧嘩っていうのは、1対1で行われ、睨み合って相手を威嚇して、一瞬の隙に相手を引っ掻くという、時間もかかるし、精神的に疲れるものです。

 

サビ猫とキー子の戦いが終わったころには、もう日はとっぷり落ちていました。

 

植栽の陰にキー子は横たわり、チビとクーが必死に介抱していました。

 

投稿者プロフィール

古波蔵ふう香
古波蔵ふう香
猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。