ふうちゃん物語(6)トラ猫のチョボ

二匹の喧嘩は長時間にわたり、サビ猫は一向に攻撃を緩める気配がなく、キー子も一歩も引かず、大きな黒猫が「いいかげんにしろ!」と一喝し、やっと終わりました。

キー子の胸も背中も血が滲んで、チビとクーは必死になめて介抱していました。

「キーちゃん大丈夫?痛い?」

「いてて・・・あいつ思いっきり爪を立てやがって・・・」

「子猫ちゃんたち、こんばんはー!」

大きな声に子猫たちがが振り向くと、丸顔で、細い目が離れてくっついているひょうきんな顔のトラ猫が立っていました。

「やーやー、どーもどーも、最近の若い子ははっきりしてて気持ちがいいねえー!

あのサビ姉さんを向こうに回して喧嘩をするなんざ男でもちゅうちょするのに、まだ子猫がねー、いや大したものだ!はははー」

キー子「何だこいつ」

トラ猫は続けます「オレ、チョボっていうんだ、よろしくね!君ら、飼い猫だったみたいだけど、どこから来たの?お母さんは?」

何だか不躾な猫だなあと、チビはお尻を向けました。

チョボは、ふとチビの尻尾に目をやると、少し驚いた顔をしました。チビは三毛猫ですが、尻尾だけは茶色で短いずんぐりむっくり、愛嬌がある尻尾なのです。

チョボは急に真顔になって、「いや、つまり野良猫ってのはね、腹ペコなのよ。

犬みたいに人の顔をうかがってって生きるのも嫌、馬みたいに決められたコースを走るのも真っ平御免、牛や鶏みたいに年をとったり病気になった途端に切り捨てられるのは論外。

自分のことだけ考えてのんびり暮らしたいと思って猫に生まれてくるのに、野良ってのは食べていくだけで精一杯、一日中食い物のことばかり考えて、のんびりする余裕なんかどこにもない。

子猫だろうと、百獣の王だろうと、食い物のことしか頭にない。この煩悩は、結局、獅子のような伝説の動物しか免れないってわけよ。」

キー子があくびをしながら言いました「つまり?」

「だからといって、子猫を責めるのは間違ってると思うわけ!オレは君らの味方だからねー!」

「何か調子のいいやつだな。言いたいことが済んだらとっとと出て行け!」キー子の一喝でチョボは追い出されました。

チョボは、帰り道「いや、焦ったね・・・こんなところで娘に会うとは・・・」チビたちのいる植栽の陰を振り返り振り返り帰って行きました。

チョボの尻尾もまた、茶色の短い、ずんぐりむっくりでした。

ふうちゃん

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古波蔵ふう香
古波蔵ふう香
猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。