田舎に帰っとるよ。実家にて〜
「お父ちゃん、ご飯食べたらひげ剃ろうか」
お姉ちゃんはそう言うとさっさとひげ剃りを持ってきて、父に前掛けをかけて、剃り始めました。
「ええなあー、お父ちゃん、娘に剃ってもろうて幸せじゃなあー」と私。
父、ときどき「いちっ」と言うけど、されるがまま。
「そうそう、お父ちゃんのきっぽ、いつの間にかなくなったんよ」と母。
「あー、ほんまじゃー。ないわ」
父の右頬には、きっぽ、やけどのあとがありました。
それはまだ父が赤ちゃんのころ、おばあちゃんが目を離したすきにかまどに落ちてしまい、熱い鍋の隅に触れてできたものでした。
「最初はほんまにちいしゃあきっぽじゃったけど、大きゅうなるに連れて、皮膚と一緒に伸びてのおや。」
なかなかのサイズになったきっぽじゃったけど、うちの家族は気にしとらんかったな。というんは、当のお父ちゃんが気にしてなかったせいもある。
ただ、若いころ正義感にあふれとったお父ちゃんは、「刑事になりたかったけど、このほおべたじゃあ犯人に顔を覚えられてしまう思うて」断念したんじゃって。
「おばあさんはよう、お前は兄弟の中で一番優しいゆうてほめてくれたわ。よう考えてみると、あれはおばあさんなりの済まん気持ち、昔の親じゃけえいちいち詫びたりせんかったけど、それもあったんかな」
以前にお父ちゃんはそう言ょうた。
おばあちゃんの刷り込み?もあって、兄弟で一番優しいゆうのはまんざら誇大広告でもなくなったわ。うちのお母ちゃんもお見合いの席で聞かされた口じゃわ。
そのきっぽが、あらら、ほんまにきれいさっぱりなくなっとる!不思議じゃねー。
お姉ちゃんにひげもそってもらって、眉も整えて、髪もさっぱりして、めっちゃ若返ったお父ちゃんでした!
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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