チビが戻ってから数日後の秋の夜のこと。
「キーちゃんどこ行くの?私も行く」チビが言いました。
「クロが、ネズミ狩りに行こうっていうから。体はもう大丈夫?」「うん、平気」「僕も行くよ」キー子は自分だけで行くつもりだったので、チビとクーまでついてきて、少しがっかりした感じでした。
不思議なことに、あれ以来、チビはかえって元気になりました。
「獅子パパが、獅子の谷は滋養強壮にきくって言ってたから、丈夫になったのかなあ?」相変わらず体は他のきょうだいより小さいのですが。
着いたのは古い居酒屋の裏手。居酒屋は既に閉店して、あたりは静まっています。街灯のあかりがぼんやり子猫を照らします。「こういうところはネズミが多くて取りやすいんだって。クロ来てるかな?先に始めちゃおう」
きょうだいで一番すばしっこいのはキーちゃんで真っ先に子ネズミを捕まえました。一番悪いのはチビです。お尻をふりふりして勢いをつけているうちに気づかれ、逃げられてしまうのです。「あーあ、運動神経は獅子の谷じゃどうにもならないんだ」
「クロ、遅いなあ・・・」キー子が待っていると、どこからか別の猫がやってきて、「クロは用事があるから来れないって」と教えてくれました。キー子はがっかり。捕まえたネズミをいたぶって気を紛らわしていると。
「あれ、あのババ猫、あのとき神社にいた姉妹のババ猫の片割れじゃない?」クーが言うので見てみると、確かに白に黒のブチ猫でした。「この間のこと、何か知っているかも」
ババ猫は「あら、そうかい?そんなことがあったのかい。いや、霊感が多少あるのは姉さんの方で、あたしはさっぱり。ごめんねぇ、何もわからなくて」とぼけているのか本気か、何も答えてくれません。
子猫たちががっかりしているのを見ると、「ねえ、あたしゃ占いは多少心得があるんだ。やってあげようかい?」そう言うので、「ええっ!?やってやってー!」キー子とチビは大喜び。どこの世界も女子は占いが大好きです。
ババ猫の占いは、左手の肉球を触って温度を確かめたり、色を見たりするものでした。「くすぐったーい」「うーん、うん、うん」何だかわからないけど、ババ猫はもっともらしくうなずいています。
「そろいました。はい、女の子たちは将来、みんな愛情に包まれた生活を送るでしょう。」キー子とチビは目を輝かせます。「これはお母さんの徳をたくさんもらっているからでもありますよ。特にお姉さんは、もう好きな人も決まっていますね」キーちゃんが真っ赤になって照れました。
ババ猫はクーに言いました。「お前は見守りの星を持っているね」
「そうなの!クーはいつも一緒にいてくれるの」チビが言うと、クーは恥ずかしそうに下を向きました。「でも、もうすぐ星が変わるね。」「えっ」
ババ猫がキー子をからかって、「ほっほっ。恋に悩むうちが花だね。昔から唄で言うでしょう。「住まいの 裏手で 鼠(ねず)とるよりも 君の心が とりにくい さりとは」ってね。」
「ねね、それ誰?誰?教えてーー!レオ?え、違うの?じゃあチョボ?まさかねー。シャケ?それとも$$とか&&とか・・」肝心な名前を外していました。
「もういいよ!」「じゃあ誰なの!?」「こんなの真正面から尋ねる子供とは話できないよ!」キー子はぷいっとして、しばらくネズミをいじくっていました。
帰るころには夜も大分更けていました。誰も何もしゃべりません。チビは、クーの星が変わったことをもう少し聞きたかったのですが、聞きそびれてしまいました。ふと、きょうだいで出かけることは、この先少なくなるかもしれないと思いました。(続く)
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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