それからまた大分たって、すっかり秋も深まってきました。チビは、獅子の谷での出来事も余り思い出さなくなってきていました。そんなある日。
「ねえ、クー、今度はあのベージュ色のマンションに行こうと思うんだけど」チビが言いました。「えー!?この間川に落ちたのに、また行きたいの?」クーはあきれ顔。
「だってえー、ここの公園だけじゃ足りないでしょ?最近猫もふえたし・・・やっぱりえさ場は何箇所かある方がいいよ。」狩りも下手なチビは、相変わらずお腹をすかせていました。
「それはそうだけど・・・」
「わかってるよー、今度は3回は下見するから!いきなり先住猫のお皿に手を出さないし、空気も読むし!」
「やれやれ。だからといって単独行動させると心配でこっちがたまらないし」クーは渋々ついてきました。
ベージュ色のマンションは、チビたちのいる公園からは割と近かったのですが、ずっと塀の工事をしていたので行ったことはありませんでした。大きなマンションで、マンションの隅には公園もあります。
二匹は駐車場の方から入っていって、木の陰からマンションの人たちを観察。夕方で、仕事や学校から帰る人、ペットを散歩させる人などが行き交い、ほっとした空気がただよっています。「きょうは下見だから、目立たないようにするからね」
すると、前方から「ねえねえー、君かわいいねぇー、どこから来たのー?」懐かしい声がしてきました。
「え・・・コロ丸?」声の方に向くと、トイプードルが一匹、尻尾を振っていました。「ねえねえー、こっちへおいでよー。」
下見なのを忘れて、チビは犬の方に向かって走りました。「ちょっと、チビ!」引きとめるクーの声が背中に聞こえますが、こういうときは聞こえません。
「コロ丸ちゃん?コロ丸ちゃんでしょ!懐かしい!獅子パパは元気?よかった、獅子の谷のこと、クーに話したけど夢でも見たんでしょって言うの。夢じゃなかったんだね!」一気に話しかけます。
トイプードルはまん丸い目をして、尻尾を振って「僕、チャーリーっていうの。うちのママね、とーっても優しいんだよー。ごはんもとーってもおいしいの!ね、いいでしょ!」
確かに姿はワンコなのですが、鼻にかかった声、妙になれなれしいところ、大好きな相手を自慢するところ・・・チビは、チャーリーについて歩きながら、上から下まで観察するのですが、コロ丸が犬の格好をしているとしか思えません。
「うーん・・・」
驚いたのはチャーリーの飼い主のママでした。散歩の途中に急に子猫が出てきて、ワンコと並んで歩いているのですから!「あれれ?この猫ちゃん、どこから出てきたの?」(続く)
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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