こちらも代表作、「ゼロの焦点」。詳しい内容が知りたい人はウィキペディアを見てねー。
松本清張は明治42年(1909年)生まれ。この作品が単行本になったのが昭和34年。(1959年)
清張を読んでいると、当時の女性の言葉遣いに癒されます。丁寧なんだけど、ちゃんと言うべきことは言っています。
例えば、主人公は新婚早々、出張に行った夫が行方不明になり、夫探しのため、出張先の金沢に行きます。駅には、早朝なのに夫の同僚が出迎えに来てくれていました。
「こんなに早くお迎えをいただいて、申しわけございません」
思わずマーカーしてしまった。
それから、もう使わない言葉も出てきます。旅館の女中さんがお布団をしくときの言葉。
「お床をとらせていただきます」
これもマーカーしてしまった。いつ使うんだ?夫が行方不明になる予定と旅館の女中になる予定は今のところないけど・・・
推理小説だけあって、殺人、詐欺、性格の悪い奴・・どんどん出てきますが、女性の言葉がきれいなのが救いです。
何かこの話知ってるなあーと思ったら、ふと柴田昌弘「盗まれたハネムーン」(1984年)を思い出しました。こちらは花嫁が失踪しますが。
松本清張を読んでいると、和田慎二とか柴田昌弘とか、子供のころ読んでいた男性の少女漫画家のテイストを思い出します。
彼らの描くサスペンスもの、推理ものは女性の作家さんとは一線を画していて、骨太で、設定も凝っていて、謎解きも難解、深刻な中にもユーモアがありました。登場する女性たちが色っぽいのも特徴でした。
和田慎二は1950年生まれ、柴田昌弘は1949年生まれです。「ゼロの焦点」が発行されたときは9歳、10歳。
この人たちも、きっと少年時代に松本清張を必死で読んだんだろうなあ、体いっぱいテイストを吸収して、漫画で発揮して、それを私が読んで喜んでいるという不思議。
「ゼロの焦点」に話を戻すと、これも戦争が重く響いています。これを読んでいたときは終戦記念日が近く、テレビでも戦争ムードが濃いときでした。
あの戦争で、男は命を無残に散らした。
生き残った女もみじめそのものだったが、男と違って、国家から表彰されたり、体験者の言葉として残っていない。自分あのころ、どうやって生き延びたか決して口にはできない、他人に知られてはいけない。
「他人を殺してでも守りたい秘密」・・・清張得意のテーマがここでもあらわれています。
読後感はとても重かったです・・・
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