ふうちゃん物語エピローグ3 キー子の巻

 

今回は、キー子のお話。キー子は、チャーリーママの妹の家に保護されました。

 

新しいおうちは、チャーリーのママと同じマンションの2階。4人家族で先住猫が4匹いたので、キー子が加わって猫の方が多くなりました。

 

「キーちゃん、きょうからここがおうちですよー」キー子はそろそろとキャリーから出てきました。

 

4匹の先住猫が迎えます。

 

「あんた外から来たんでしょ?今、外ではどんなのがはやってるの?ここにいると世間に疎くて」

 

先住猫たちは皆、外の話を聞きたがったので、ネズミ狩りの話や、うそっこの肉球占いをしてあげると大喜び、あっという間にキー子は人気者になりました。

 

キー子はリビングの窓際で一匹、ぼーっとしていました。キジトラの毛皮にカナリヤ色の新しい首輪がよく似合っています。

 

飼い猫って、ご飯を食べるとやることないや。外ではネズミ一匹とるのに一日がかりだったけど、むしろそれが楽しかったな。猫とネズミの知恵比べ、命をかけたスリルがあったもの・・・首輪が慣れなくて、つい足で触ってしまいます。

 

ふう

 

「にゃー(おい)」どこかから声がしました。

 

窓の方を向くと、ベランダにクロがいました。驚くキー子。

 

クロ「すっかり飼い猫が板についてるな、黄色の首輪なんてしちゃって」

 

「どうやって来たの?」キー子が聞くと、「木に登って、ベランダ伝いに来た」ここは二階なので、隣の家のベランダには木の枝が伸びていました。

 

「バカみたい」キー子はわざとぷいっとしました。

 

クロ「ネズミ狩りのいい場所見つけた。古い民家で、大きいのがいるぞ」

 

「ふーん」まだつれないそぶり。

 

クロ「大きいのを捕まえて、おまえにやるから。絶対やるから」

キー子「・・・・・」

 

「キーちゃん、キーちゃんはどこ?」ママが探しに来たときには、窓が少しあいて、首輪だけが残されていました。

 

ふう

 

ーーそれから次の春がやってきてーー

 

いつもの公園にも新しい緑が芽吹き、うららかなお天気の日でした。

 

「あーーっ、いい季節ねえ」タビ姐さんがのんびり散歩をしていると、くしゅん!と誰かくしゃみをするので振り向くと、チョボがいました。

 

「どうしたの、くしゃみなんか」「いや、今年は妙にむずむずして」「やだねえ、猫なのに花粉症かい?」なんて話をしていると、向こうの茂みから、何やら賑やかな一群がやってきました。

 

キー子でした。後ろには子猫を五匹も連れています。

 

「あらっ!キーちゃん、元気そうだねえ!あらまあ、みんなかわいいこと!ほーら、おばちゃんでちゅよー」ちびっ子をあやすタビ姐さん。

 

チョボ「おっ、クロの兄貴の子って、こいつらかい?うわー、黒いのやら黒っぽいキジトラやら、よく似てんなあ。おれ、それじゃ、おじいちゃ・・」全部言ったら怒られそうなのでやめました。

 

キー子「あっ、タビ姐さん、こんにちは。子育てって大変ですね!もう一日があっという間に過ぎちゃって、自分のことなんて何にもできなくて!クロ?ええと、最後に会ったのはいつだったかなあ?」

 

猫の恋なんてそんなもんです。

 

ふう

 

「ママー、お腹すいたー!」「ママー、おちっこ出たー!」「痛ーい!ママ、チビ太がかんだー!」幸せいっぱいの賑やかさです。

 

「はいはい、そこけんかしない!チビ太はクー太をかまないの!ママの言うことよく聞いて!きょうは木登りを教えるからね!」

 

タビ姐さん「ちょっと、まだ小さいのに、木登り教えるの早過ぎないかい?」

 

キー子「いいえ、姐さん、野良猫は木登りもできないといけないし獲物も自分で捕れないといけないし、これからはスイミングだって必要ですよ。小さいうちから始めれば大丈夫!はーい、じゃあママのをよく見てやってみて!」

 

子供たちはきゃっきゃと遊びながら登り始めます。キー子は「ほら、足をこっちに」とか「爪はこう引っかけて」とか熱心に教えます。

 

「へーっ、キーちゃんがこんな教育ママになるとは思わなかったねー」「ほんと・・・」チョボもタビ姐さんも驚くやら感心するやら。

 

いつもの公園の新しい風景でした。

 

ふう

がりっ!

ふう

いたた・・・爪がささったー

あっ、ごめん、痛かった?

 

 

 

 

 

 

投稿者プロフィール

古波蔵ふう香
古波蔵ふう香
猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。