「パパー!お友達連れてきたよ!ママー!僕のお客さんなの、お昼はおいしいもの出して!」
「お友達だって?」出てきた獅子パパを見て、チビはびっくり。
大きな獅子が銀の長いたてがみを揺らしながら出てきました。姿は猫のようですが、チビが今まで見た動物の中では犬よりも大きく、大きな手足、鋭い眼光で、何より威厳に満ちていました。
「お、お邪魔します・・」チビが小さな声で言うと、
「おおーー!こりゃ子猫じゃないか!しかも三毛猫!久しぶりだなあ、猫に会うのは。
おうおう、そんなにちっちゃくならんでもいいよ。獅子と猫とはいわば親戚同士、自分ちに帰ったみたいにゆっくりしておくれ。こりゃ母さん、とっておきのごちそうを出してくれよ」
「はいはい、坊やの大事なお友達、腕をふるいましょうね」ママはパパほどたてがみもなく体も小さめ。優しい声で「さあ、こちらへいらっしゃい」とテーブルの前に座らせてくれます。獅子ママのお料理がずらりとならびます。
「せがれと遊んでくれてありがとう。一人っ子のせいか、ついつい甘やかしてしまってな。
よく聞かれるんだ。「獅子さんは、本当に子供を千尋の谷に突き落とされるんですかー?」って。もう何千回聞かれたか。これは人間が勝手に言い出したことで、はっきり言って獅子は迷惑よ。
人間は、自分の子供に厳しくできない戒めに獅子を引き合いに出しているんだろうね。
そんな児童虐待みたいなことしないって、獅子は。大事な一人息子だもの。
実を言うと、獅子の谷な、あれ、獅子なら子供でもひとっ飛びなんだ。チビちゃんもさっき飛んできたからわかるだろう?だから突き落とすなんて意味ないんだよ。
ただ、獅子の谷は神気に満ちていて、滋養強壮にはもってこいだ。ワシも飲み過ぎた日の翌日とか風邪の引き始めには行くんだ。そうすると体調よくなるからね。子供が生まれたら、7日目には獅子の谷の一番深いところのお宮に行って、元気に育つように祈願するんだ。それを聞きかじった人間が早合点したのかもしれないね。」
獅子パパはおしゃべりしながらも「ほら、これも食べなさい」とか「これもおいしいよ」とかチビのお皿に次々にご飯を盛ってくれてるので、チビはお腹いっぱい、どうして自分はここにいるのか聞きたかったのを忘れてしまいます。
「ねね、ご飯はこのくらいにして遊ぼうよー」コロ丸がじゃれてきます。「こら座りなさい、まだご飯の途中でしょ。ほら、お口の周りにお弁当つけて」ママがぺろぺろしてとってあげます。
獅子パパがふと窓から外を見ると、石橋を渡ろうとする人影が見えました。
「こらーーー!!そこで何をしている!」大地が割れるような大声にチビはびっくりしてしまいました。(続く)
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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