「ねえー、起きてぇ、起きてよおー」誰かが甘えた声で顔中ぺろぺろしていて、チビは目が覚めてきました。
「起きないとこうだよー!」声の主は今度はくすぐってきたので、たまらず「きゃははは!くすぐったいってば!」
チビが目を開けて見ると、自分より少し大きなトラ猫の子猫が目の前にいました。「どちらのトラ猫?」と聞くと、「僕、猫じゃないよ。獅子なの。ほら、手も足も君より大きいでしょ」と答えるのです。
確かに、比べて見ると大きさが違います。「僕のパパはもっとすごいよー。たてがみも長いし、体も大きいんだ!」獅子の子は胸を張りました。
チビは体を起こして、ぷるぷるっと払います。思ったより汚れていません。
「ねね、君なんて名前?チビちゃん?かわいいね!僕コロ丸っていうの!」
体を起こしてあたりを見回すと、自分が寝ていたところはピンクの花畑、周囲はごつごつした岩に囲まれ、どうやら谷底のようで、薄い光が差し込んできています。すぐ近くには川も流れていますが、さっき見た急な流れの川ではなくて、川幅も広く、水は穏やかに流れています。
「君、この川に流されて、岸辺の石に引っかかってたから、僕がここまで引っ張ってきたの」「そうなの?」チビはあたりをきょろきょろ。
「ね、もうお昼だし、僕のお家に行ってお昼ご飯にして一緒に遊ばない?」自分は何でここにいるのか落ち着いて考えたいところですが、ともかくお腹が減っているので、ここはコロ丸のペースに乗ることに。「うん、いいね」
「じゃあ行こう!僕んち、あそこ」コロ丸が指差した先は、高い高い崖の上に小さな赤い屋根のおうちが見えます。その崖には立派な橋がかかっているようなのですが、遠くてかすみがかかって、よく見えません。
「無理・・・あんな高いところ、登れないもん」チビが言うと、コロ丸は「大丈夫、僕が連れていってあげるから。すぐだよ」チビの首の後ろをぱくっとくわえチビは「私、高いところ苦手だから・・・」と手で目を覆いました。そのとき何か思い出しかけたのですが、よくわかりません。
「はい!着いたよ」「あれ?もう着いたの?」息を吸ってはいたぐらいの時間でした。さっきまでいた谷底ははるか眼下にあり、ピンクの花畑も川も、遠く小さく見えるのでした。
獅子の子の家は崖よりちょっと奥まったところにあり、神社のようなつくりのおうち、後ろにも脇にも大きな木が生えています。崖には大きな石橋(しゃっきょう)がかかっていて、この橋は隣の山まで続いているようでした。
「ただいまー!帰ったよー!パパー、お友達来たの!」
「おお、お帰り。誰か見えたのかい?」獅子のパパが出てきました。(続く)
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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