チャーリーのマンションからの帰り道、チビの足取りは重いものでした。
どうしよう・・・何だかあそこに行きにくくなってしまった・・・せっかくいいえさ場を見つけたのに・・・
同時に、なぜあのとき「自分はずっと野良のつもりだから、これからも食べに来るだけなんだ」と言わなかったのだろう、「飼い猫になってもっとたくさん食べたい」と言ったのだろうと心に引っかかっていました。
飼い猫になれば、お腹いっぱい食べれるみたいだけど、人間の勝手でいつか捨てられるかもしれない。それはいいとしても、クーが言ったとおり、外に出してもらえなくなって、きょうだいや公園のみんなとももう会えなくなるかもしれない・・・
帰ってクーに相談しようと思いました。クーはきっと飼い猫になるのは反対するはずだから、言ったとおりにしようと思いました。
公園の入り口のところまで来ると、誰かが喧嘩している声が聞こえました。
「もう、何だっていつも約束を破るわけ!?この間もネズミ狩りに行こうって、結局待ちぼうけだったし!」「別に破ってないよ。遅くには行ったよ。ただ、チョボのやつがさあ・・・」
のぞいてみると、キー子とクロでした。
「あれ?あ・・・」そうか!キーちゃんのお相手は・・・!チビがどぎまぎしていると、キー子が「もう帰る!行こう!チビ」と言ってすたすた歩き出したので、チビは慌てて後をついていきました。
チビが「ねえ、キーちゃん・・・」と話しかけようとしても、キー子は「全くもう・・・あいつ・・・」とぶつぶつ言っているので、お互い何も言わずに歩きました。
「あれ?キー子久しぶり」いつもの植栽の陰にクーはいて、久しぶりにきょうだいが顔を合わせました。
チビはクーに、
「あのさ、この間の話、やっぱりあたしの勘違いだったの。・・・へへ、バカだよね。チャーリーのママはチャーリーだけのママなの。チャーリーに、私は別のいいところで飼われて、もっとお腹いっぱい食べるつもりって言っちゃったけど、クーはそんなの反対だよね。」
キー子はちょっと驚いて、「何?最近どこかからご飯もらってるの?」
チビ「うん、ワンコのママ。飼ってくれそうな雰囲気なの。ワンコと一緒は無理でも、どこかで飼ってくれそうなの」
キー子「ふーん。チビは飼い猫向きだもんね。どんくさいし、ネズミもヤモリも狩りは下手だし」
チビ「何よ!失礼ねー。
でも、飼い猫になったらみんなにも会えなくなるし、クーは反対だよね?これからもご飯だけ食べに行けばいいよね?」
チビがクーの顔をのぞき込むと、クーは、
「いいと思うよ。キーちゃんの言うとおりかもね。
久しぶりにきょうだいそろったから、キーちゃんも聞いて!僕、近々、ここの公園を出ようと思ってるんだ」
「ええっ!?」
「子猫のときに偶然ここに来て、いろいろあったけど、ここはまあ居心地がいいところだよ。みんな顔なじみだし。でも、違うところにも行ってみたいんだ。いろんなものを見て、いろんなやつに会ってみたいんだ」
「ちょっと、クー、いつからそんなこと考えてたの?」焦るチビ。
「わからないけど、だんだんそんな気持ちになったんだ。
心配事があるとすればチビのことだけ。僕はママからチビのお守りを仰せつかったからね。でも、チビが飼い猫になれば僕も安心だよ。」
チビ「何それ!」
キー子「クーがそんなこと考えてたなんて。あたしたち、もう捨てられたときの右も左も分からない子猫じゃないから、そろそろ潮時かもしれないね。別の縄張りに行くのは大変だけど、体に気をつけてね」
クー「ありがとう、キー子」
チビ「ちょ、ちょっと待ってよぉ」
キー子「いつ行くの?」
クー「チビが保護されるのが決まってからにしようかな。でも遠い日じゃないよ」
チビ「何で今そんなこと言うの!クーは、ずっと公園であたしを守ってくれないと困るじゃない!」
頭が混乱して、チビは茂みを飛び出してしまいました。(続く)
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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