ふうちゃん物語(16)寄せる岸辺の流れに

くすくす笑いの方に振り返ってみると、小柄で淡い色の三毛猫がいました。

「ママ、ママって泣いてるから赤ちゃんかと思って来てみたら、こんな大きい子がべそをかいてるじゃないの。」

ミャー子はちょっと恥ずかしくなって、ぷいっと顔を背けて「・・・あなたにはわかんないよ、私の気持ちなんて。」と精一杯強がって言いました。

「ああ、そうだね、聞かなきゃわかんないよ。何があったか言ってごらんよ。」ちょっと優しく言われたので、ミャー子はぽつりぽつり、今までのことを話しました。ママとの別れ、新しいうちのこと・・・

一通り聞いて、三毛猫はぽそっと言いました。「うらやましいね・・・」

「私は生まれたときから母さんもきょうだいもいなかった。泥水をすすって、流れ流れてどうにか生きてきた。

他の猫はいつも奪うか奪い取られるかでしかなく、人間は恐ろしいものでしかなかった。

心から甘えられる母さんが欲しくて欲しくて・・・せめて母さんになりたかったけど、子猫たちはみんな夏の暑さにたえ切れなかった。

いつもひとりぽっち。たくさんの猫、大勢の人間に会ったけれど、目の前を通り過ぎたというだけ。

私はもう誰に会っても一つも期待していない。悲しみも寂しさも、心を動かさなければ何もなかったのと同じだからね。」

「・・・・」ミャー子はじっと聞いていて、何と言っていいかわからなかったので、ぺろぺろっと三毛猫のほおをなめました。「誰にも期待していない」と言う三毛猫が、とても寂しそうに見えたからです。

三毛猫は「あら・・・」と少し照れて、「こっちへおいで。少しだけどご飯あるよ」と茂みの奥へ誘ってくれました。

ミャー子が後ろをついて行こうとしたとき、がやがやと人間の声が聞こえてきました。

「こっちこっち!さっき車の中から見たの!あれは絶対ミャー子だった!」レナとあずさでした。「ミャー子ぉ、出ておいでー!」「ミャー子ー!」

「・・・・」ミャー子は足をとめてしばらく考えている様子でしたが、くるりと向きを変えて三毛猫の後に従い、もう振り返りませんでした。(続く)

ふうちゃん