ふうちゃん物語・夏(1)嵐の後に

ふう「最近疲れた疲れたって言ってるのに、また始めるにゃ?」

ふう香「そうなの。ばかだよね・・・毎日は無理だし、ちゃんと書けるかわかんないんだけど・・・」

ふう「仕方ないにゃー。でも、今度こそふうちゃんに素敵な出会いがあるといいにゃ!」

というわけで、また始めます。ふうちゃん物語・夏!!

ふうちゃん一家が新しい家に越してきてはや半年、季節はそろそろ夏に向かっています。

「はあ〜、おはよ」お父さんが起きてきました。

「おはよ。あれ?いつもより早いじゃん」お母さんはちょうど自分の朝ごはんが終わったところでした。

早いといっても、時計は既に10時近く。きょうは日曜日なのでお母さんもゆっくりなのですが、お父さんは毎日もっとのんびり起きてくるのでした。

「ふぅーーぅ」ふうちゃんも猫語で挨拶です。「ふうちゃん、おはよ」お父さんは、ソファの上で寝ているふうちゃんの頭をなでてくれました。いつもの古波蔵家の風景です。

「きょうは空手の実演があるから、早めに起きたの!」

ふうちゃん一家が引っ越したのは、一階に空手道場がある小さな戸建てでした。お父さんはここで空手を教えるつもりです。

沖縄出身のお父さんが沖縄伝統空手を始めたのは約十年前、好きが高じてサラリーマンをやめてしまいました。

とはいえ、まだ生徒もまばらなので、宣伝して弟子獲得をしないといけません。きょうはお昼から銀座にある沖縄のアンテナショップで空手実演をする日なので、お父さんは早起き?したのでした。

窓の外をちらっと見て、「どうやら台風も過ぎたみたいだし、よかったな」とつぶやきながら、テレビをつけます。気の早い台風が上陸して、週末からずっと大気不安定、きのうは1日雨風強かったのでした。

「もう地下鉄も平常運転みたいよ。よかったね」お母さんが言いました。

「うん。ただ、空手の前に、沖縄から来る歌手の子が歌うことになってるんだけど、大丈夫かなあ。あー、台風、どんどん西の方に行ってる」

「え?その子きょう来るの?」

「お昼前には羽田に着く予定だったんだけど、飛行機はちょっと厳しいかもなあ・・・あ、ふうちゃん、テーブルの上に上がらないの!こら!」

ふうちゃんはついテーブルに上がってしまうので、いつも怒られます。抱きおろそうとするお父さんの腕をひゅんとかわして床に着地します。

「まったくもー」お父さんはテーブルの上に無造作に置いてある新聞や郵便物をまとめてスペースをつくりますが、ふと、新聞のある記事に目がいきました。

ーー国の天然記念物・ジュゴンの死骸見つかる。○日、沖縄本島北部の西海岸の沖合でジュゴンの死骸が見つかった。沖縄県が確認中。西海岸に生息する「個体B」の可能性があるーー

「ふーん、ジュゴン、死んじゃったのか・・」お父さんがつぶやくと、お母さんも記事を読んでいたらしく「個体Bって、味気ない名前だよね。沖縄にしかいないのに、最初から愛情を感じられないなあ。」

「やっぱりあの工事の影響かな」「うん、政府は否定してるけど・・・大体、ジュゴンの生態がわかっていないのに、影響がなかったなんて言えるのかな」

そんな会話をしていると、携帯が鳴りました。

「はい、もしもし!」実演の場所となるアンテナショップの店長、渡(わたり)さんからでした。「もしもし、急で申し訳ないんだけど、やっぱり飛行機だめなんだって」「あ、そうですか!じゃあ早めに出ます!」

電話を切って、お父さん「歌手の子が来れないって。空手の実演の時間が早まったから、ちょっと急ぐよ!」あたふたと身支度をし、出かけていきました。(つづく)

ふう

ふうちゃんとにゃんガード。一回の道場には降りられません。