ふうちゃん物語(3)子猫、野に放たれり

 

キー子、クー、チビ(後のふうちゃん)は公園にいました。

 

あずさの奮闘むなしく、引き取り手が見つからなかったからです。

 

ミャー子はあずさの友人、レナに引き取られました。

 

母猫のミー子は、産後の肥立ちが悪く、まして子猫と離れ離れになるのをあずさのお母さんが大変気の毒がって、近所の福井さんに無理を言って引き取ってもらうことになりました。

 

こうして親子はばらばらになりました。

 

「ここだったら絶対ばれないよね。」

 

あずさと翔は、近所にある無人アパート「しろがね荘」の庭でこっそり飼おうと計画し、子猫とご飯をダンボールに入れて置いておきましたが、数時間後に様子を見にいくと、もうダンボールはもぬけの殻、ご飯を食い散らかした後だけになっていました。

 

実はこの辺りにはたちの悪い猫が多く、おいしいご飯を見逃さなかったのでした。

 

子猫たちも気圧される感じでアパートの庭から離れ、どこをどう歩いたのか、ここ緑山公園にたどり着いたというわけです。

 

この公園はあまり大きくないのですが、樹木はたっぷりあり、チビたちは植栽の影になっていて下草が茂っているところにいました。

 

ふう

 

「お腹減ったねえ・・」チビが独り言を言いました。

 

「何も食べてないもの。」クーが答えました。

 

キー子は黙っていました。

 

3匹は、動くとお腹が減るのでじっとしていました。

 

「ママに会いたいなー。」

「チビ、別れ際にママが教えてくれたようにしてみよう。」クーが言いました。

 

ママは、別れ際にある方法を教えてくれました。

 

「ママに会いたくなったら、目を閉じてじっとママのことを考えてごらん。猫は猫だけのテレパシーを持っている。そうやっていると、会いたい猫の心の中が伝わってきて、相手のことがわかるんだ。

 

相手にテレパシーを飛ばすと、相手も気がついて意識を向けてくれるんだ。

 

これは普通、子猫にはできない。子猫はまだ会いたい猫がいないからね。

 

大人になっても会いたい相手がいない猫も、当然できない。寝ているだけだよ。

 

人間は猫が寝ていると思っているけど、ほとんどの猫はこのテレパシーを使っている。大人の猫が寝てばかりいるように見えるのは、会いたいけど会えない相手が多いからなんだ。」

 

チビは、教わったようにじっと集中すると、だんだんママの気配を感じられるようになってきて、ママがずっと子猫たちを案じていること、体が少し元気になったことがわかりました。

 

新しいお家に行ったミャー子にもテレパシーをしたのですが、何も返ってきませんでした。

 

はたから見ると、子猫が気持ちよさそうに眠っているように見えたでしょうね。

「人間が来た!!」「飯だ!!」

 

どこからか大きな声がして、チビはびくっと目を覚ましました。

ふうちゃん

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古波蔵ふう香
古波蔵ふう香
猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。