ふうちゃん物語(19)ニセモノ僧侶の真実

タカシはこのまま若住職をやってていいのか悩んでいました。

厚労省をやめて寺を継ぐか?檀家は減ったが、ぜいたくしなければ食べていける。

別に、神も仏も信じない、人間は死んだら無になるって言うつもりはないよ。小さいころからお葬式やらお彼岸やらには自然に手を合わせる生活を送ってきたし、キャット仲人協会もやってるから、生き物を大事にする気持ちもそれなりにあるつもり。

でもなあ・・・だからといって僧侶になるのはハードルが高いような気がする。

俺んちは親父も兄貴も役人で、ごく普通の日本人レベルでしか神仏とつき合っていないから、毎日お経を上げるって生活はぴんとこないなあ・・・

じゃあミチコと別れて、はいサヨナラっていうのも、子供も生まれるし、ないよなあ・・・うーん。

考えても結論が出ないのでした。

ミチコがやって来て「タカシ君、帰ってたの?」同時に「あーーっ!忘れてた!」タカシはがばっと起き上がり、「資料!あしたの会議の!」

やおらパソコンを開け、仕事を始めました。「ね、最近資料ばかりつくってるけど、何やってるの?」

「うん、今、保険制度を見直そうって検討会を開いているんだ。日本は少子高齢化で保険料を負担する人口が減っているのに受給する人はふえる一方だろう?みんな、自分が歳をとったら医療費が上がって支払いができなくなるんじゃないかっていうのが不安なんだよね。そこを解消しようっていうこと!」

タカシは猛然とキーを叩き始め、資料ができ上がったのはもう明け方・・・眠い目をこすって準備を整え、霞が関へ向かいます。

役所では朝早くから会議が始まり、タカシも若手ながらプロジェクトの一員で、積極的に発言します。「ですから、もう一度「揺りかごから墓場まで」という言葉を思い出さないといけないと思うんです。新保険制度では・・・」

その姿は、普段のちょっと頼りないタカシではなく、一人の理想に燃える若き官僚でした。

さて、西円寺に住み着いたミャー子とコハルに話を戻しましょうか。(続く)

ふうちゃん

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古波蔵ふう香
古波蔵ふう香
猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。