獅子は尋ねました。「やっと運が回ってきたのに、どうしてここへ来たと思う?」「え?」
「お前、最近、父親と同じ年齢に近づいてきて、父親みたいに早死にしたらどうしようと思ってないか?」
歯医者はどきっとした表情を浮かべます。
「ローンの返済表を見たときはもちろん、仕事の合間に、駅で電車を待っているときに、ちょこちょこ、そろそろオレも親父の年齢に近づいてきた、親父みたいに早死にしたらどうしようと思ってないか?思っているだろう!
今自分が死んだら、妻も子も、あのときの自分みたいに苦労するのかなとか思っているだろう!」
「はあ、あの、実は・・・」
「そう思う人間は多いんだ。
お前の話じゃなくても、親父が何歳で仕事で成功したから自分もそのころには成功するぞとかは思わないんだな。なぜかみんな、いい話はほっておいて、死ぬ年齢だけ親とおそろいなんだ。自分もあの年齢に近づいた、じゃあそろそろかなと思うんだ。それは人間の心の弱さでもあるんだ。
死んだらどうしようと思うこと自体は、もっと生きたいと思う気持ちの裏返しでもあるから、悪いことではないのかもしれない。
しかし、わしから言わせると、何でストレートに、もっと生きるぞ!と思わないのかね。お前にしたって、「死んじゃったらどうしよう」じゃなくて、「親父の年齢なんか楽々超えてやる」と思えないかね。
お前の父親は確かに早死にしたけど、母親は病気もせずに家計を支えてくれ、いまだに孫の世話とかクリニックのこととかやってくれているだろう。母親の年齢を計算に入れないのかね。
「そうか・・・」歯医者は何か考える様子。(続く)
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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