歯医者の背中が見えなくなるまで、獅子たちとチビはどんぐりの木の方を見ていました。
コロ丸が「パパ、格好いいでしょ!」とチビに言うと、チビはまだ緊張した面持ちで「うん・・・」と言うのがやっとでした。
獅子パパはにこっと笑って「やあ、小さいお客さんに堅苦しい思いをさせてしまったな」と言っておわびにぺろぺろしてくれました。
そこへ猿と狐がぞろぞろっとやってきて、
「よっ、ちーっす。お客さんが来て賑やかなんで、ちょいと寄らしてもらおうとタイミングをうかがってたんですが、どうやら迷子の保護もされてたんで」
獅子パパ「おう、もう終わったよ。きょうは非番かい?」
猿「そういうわけでさぁ。へへ、オレは運がいいね。」猿たちは手に手にとっくりを持ってきていました。
狐は「これ、つくり過ぎちゃて。お口にあうかしら?」と獅子ママにそっと重箱を差し出します。「あら、まあまあ」中にはおいなりさんがぎっしり。
「よーし、見とけよ、これはお正月しかやらないんだけど、お客さんも来ためでたい席だからな!昔、歌舞伎役者にこれを教えてやったらたいそう気に入って、今でも大人気な演目らしいぞ」
獅子パパ、庭先のちょっと小高いところに登って、長い長いたてがみを右にばさっ、左にばさっと揺らせたかと思うと、「そーれっ」空いっぱいにくるくると回し始めました。青空に銀のたてがみがきらきらして、その勇壮なこと、美しいこと。知らず、天から音楽が降ってきて、一同わーっ!と拍手喝采、やんややんやと宴会の始まりです。
コロ丸とチビも、たてがみを縄跳びに見立ててぴょんぴょん飛んだり、たてがみの先っちょにつかまってぶんぶん回って歓声を上げます。
その後は、猿のものまね大会、狐による人間の美女の化け比べが始まりました。
中でも1匹、たいそう上手に世界的美女に化けた狐がいて、皆が感心していると「いや、実はあれはオレだ」と嘘とも本当ともとれない告白をしたので大受け、「実はあれも」「これも」と悪ノリする輩が続出、あっという間に世界じゅうの美女がそろってしまいました。子供たちは、その都度腹を抱えて笑ったり、驚いたり。
やがて、獅子の谷が茜色に染まり、鳥がねぐらに帰る声が聞こえてきました。こうなると不思議なもので、どんなに楽しい時間を過ごしていても、自然と暇乞いをしたくなるものです。
コロ丸はママの腕の中で「また遊ぼうね!」と言い、獅子パパは「気をつけてお帰り。お土産を・・・かさばらないものがいいな・・・・を・・・して・・・
そうして、茜色の空も、獅子親子の姿も、明け方の夢のように淡く、おぼろになっていきました。
・・・・・・・・・・・・・・
地上では、猫たちが大騒ぎをしています。(続く)
投稿者プロフィール
- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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