ふうちゃん物語(40)壁に耳あり

 

季節は秋、チビたちの公園にもコスモスが揺れています。

「わあ、ことしはきれいに咲いたわね」タビ姐さんが来て、花に顔を近づけて香りをかいだり、花びらをかみかみしたり。

 

タビ姐さんはクロの姉だけあって毛皮は黒いのですが、足先だけが足袋を履いたように白いのでその名がついています。少し小柄で、全体に粋な感じなのは、昔日本舞踊の師匠に飼われていたからだとか。

 

「あら?」コスモス畑の向こうにキー子とクロがいるのが見えました。「あの子たちどうなってるのかしら?

 

猫の恋愛って、実はメスが全部お膳立てしてるんだけど、主導権はオスにあるようにするのが面倒なのよね。クロは気がきかないし、キーちゃんもその辺まだわかんないだろうし・・・大丈夫かしら」そろりそろりと近づき、聞き耳を立てます。

ふう

 

姐さんはまだ若いのですが、自分の恋はちょっとお休み。最近の関心は、専ら弟のお相手です。女も年をいってくると他人の縁談をまとめたがるのは、人間も猫も変わらないみたいです。では、キー子とクロの会話と、タビ姐さんの心の声の副音声つきでお楽しみください。

 

クロ「聞いたぞ。飼い猫になるんだってな」(タビ;何それ?初耳よっ!)

 

キー子「まあね」

 

クロ「シャケが寂しがるぞ」(タビ;自分が寂しいのに、ほかのオス猫出す?)

 

キー子「関係ないよ、あんなの。」(タビ;ほら、キーちゃん顔がこわばって)

 

キー子「でも、あたし、今さら飼い猫できるかな。ほら、がさつだし、喧嘩っ早いし」(タビ;引きとめてほしいのよね)

 

クロ「いや、猫の中には野良しかできないやつもいるけど、お前は子供のころ飼い猫だったから、大丈夫だろう」(タビ;はああ??)

 

キー子「・・・!もういいよ!」キー子は悲しそうな目でクロの方をちらっと見て、走って行ってしまいました。クロはキー子の後ろ姿をぼーっと見ていると・・・「ちょっと!何で引きとめないの!」いきなりタビ姐さんが出てきました。

 

「わぁっ!姉ちゃんまさか聞いてた!?」「んもー、バカねー!何で一言、行くなって言ってあげないの!」

 

「え!?だって飼い猫になるって言ってたから!」「女の言葉をそのまま受け取るんじゃないわよ!」「知らねーよ!」きょうだい喧嘩は延々と続くのでした。

 

ふうちゃん

 

チビ「キーちゃん、飼い猫になるって言ったけど、本当にそれでいいの?」

 

キー子「うん、もう気持ちは決まったから。あたしもチャーリーのママに頼んでみる」

 

二匹は一緒にチャーリーのマンションに向かいました。(続く)

 

ふう