ふうちゃん物語(47)ぶつぶつ三味線

「この三味線に猫の皮が使われているなら、何か答えるはず!」ふうちゃんは三味線に語りかけてみました。

 

「失礼しまーす、もしもーし・・・」

 

しーん。

三味線は何も答えませんでした。

 

「あれ?何も答えない・・・ってことは、これは猫の皮じゃないみたい」拍子抜けしていると、お母さんが部屋に入ってきて、

 

「ふうちゃん!この部屋に入っちゃだめでしょ!」「にゃおーん」

 

三味線に寄り添っている猫がかわいくて、お母さんは本気で怒れません。

 

「ふうちゃん、三味線に興味あるの?やっぱり何か感じるんだねー。この三味線は合皮だから安心してね」と言いました。

 

合皮?ということは、あたしは皮にされなくて済むのかな?

 

どうも大丈夫らしい・・・という曖昧な感じでこの件はおさまりました。

ふう

 

ふうちゃんは、しばらくすると三味線の音色を聞き分けられるようになりました。

 

「うーん、お母さんの手は、スクイは速く、ハジキはおくれて聞こえるなあ。えーと、二つ目の音が早いから、一つ一つはっきり弾いた方がいいんじゃないかなあ」などと、栄之丞先生ばりのことを言えるようになっていました。

 

注;スクイ(糸を下から上に弾く)、ハジキ(左手薬指で糸を弾いて弾く)

 

「レオの言ったとおり、猫は耳がいいから音楽家に向いているかも。でも、三味線って相当練習しないといけないから、やっぱり聞いている方が楽でいいや」と思って、ごろごろ寝ているふうちゃんでした。

 

それからしばらくたって、きょうは三味線のお稽古の日です。

 

ピンポーン、「こんにちは、お邪魔しまーす!」栄之丞先生がやって来ました。手に何かを持っています。

 

「お待ちどうさまです!やっとでき上がってきました!」手にしていたのは、新しい三味線のようです。

 

「ありがとうございます!わー、早く見たい!」

 

こんなやりとりが玄関先であるのを、ふうちゃんは押入れの中で聞いていて、ふと何か気配を感じました。

 

あれ?何か感じる・・・押入れから出て、そーっと秘密の部屋の前へ。

 

「・・・ぶつぶつ・・・・」

 

誰か、ぶつぶつ独り言を言っている声が聞こえます。そして、その声は、明らかに新しい三味線の方からしてくるのでした。(続く)

 

ふう

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古波蔵ふう香
古波蔵ふう香
猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。