「あれ、それ、新しい三味線?」お父さんが帰ってきました。「そう!いいでしょ!」お母さん得意げ。
どうやら人間は何も感じてないようです。その三味線がずっと一人でつぶやいているのを。
テーブルの上の三味線をちらっと見てお父さんが言います。「これって、猫?」
「ううん、合皮。合皮の方が取り扱いが簡単なの。」
「ふーん。なかなかいいんじゃない?
でも、まあ、正直オレあんまり好きじゃないな、古い、誰が使ってたかわからないようなものって」
「何よー、古道具屋の店先で見つけて一目惚れしたんだもん。店員さんが、お客さん、この三味線はいい木を使ってあるからお買い得ですよって。棹はちゃんとした紅木だし、これだけの木は最近ないって。
先生に頼んで三味線屋さんに修理してもらったら、ほら、立派な三味線になったでしょ!いいじゃない!あたしが使うんだから!」
「うんうん、きれいに仕上がってるよ。あれ?ふうちゃんは?」お母さんの勢いをそらすために、お父さんは話を変えました。
「にゃおーん」(ふうちゃんも、その三味線苦手・・・)ふうちゃんは部屋の隅に隠れていました。
「何でそんな隅にいるの?お腹減ってるの?チュールをあげるからね」
おやつをもらって、いつもは嬉しいのですが、きょうは三味線が気になって仕方ありません。お皿をぺろぺろなめながら、三味線の方をちらっと見ると、そのとき三味線は黙っていたので、ほっとしました。
「コンビニ行くけど、何か欲しいのある?」「あ、私も行く」二人は出かけてしまいました。
「・・・ぶつぶつ・・・ぶつぶつ・・・」再び三味線が何か言い始めました。
「何言っているんだろう?」怖いながらもふうちゃんが耳を傾けてみると・・・
「・・・三毛猫・・・恨むぞ・・・」
切れ切れにこんな言葉が聞こえてきたので、ふうちゃんは総毛立ってしまいました。
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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