動けなくなったふうちゃんに、化け猫が襲いかかってきます。「もうだめだ!」
そのとき、ふと獅子パパが別れ際に言っていたことを思い出しました。
ーーお土産をあげようね。かさばらないものがいいな。何か困ったことがあったら、「カミアライ、カミアライ、カミアライ」と三回唱えるんだ。カミは髪でもあり神でもある。神様が困ったことを全て洗い流してくれる。ちょっと荒っぽいやり方でねーー
最後の力を振り絞って「カミアライ、カミアライ、カミアライ!!」と唱えると、、、
化け猫の足がお鍋の取っ手に引っかかって・・・お父さんが出がけにスパゲディをゆでようとしてそのままにした鍋ですが、ざばっ!鍋はひっくり返って化け猫は水浸し!!「ぎゃーーーーっ、水嫌い!!」
がらんがらーん!鍋の転がる音が響きました。化け猫はびっしょり濡れて、鍋の下敷きになっていました。
同時に、火のついた山も、草木も岩も、全てすーっと消えていきます。
ふうちゃんが呆然としていると、どこかから清らかな水音がしてきました。
気がつくと、目の前に、澄んだ小川が流れ、岸辺には牡丹の花がピンクの花をつけ、見覚えのある獅子の谷の風景になりました。花の向こうに懐かしい姿が見えます。
「チビちゃん、あ、ふうちゃんか、久しぶりだね!」「あれ??コロ丸ちゃん・・・?」
ふうちゃんは驚いて駆け寄って抱きつきます。「コロ丸ちゃん!?わーい、コロ丸ちゃんだ!会いたかったよー!!」
「ふうちゃん元気?パパもママも元気だよ。パパはいつもふうちゃんの話をしてるよ!少し大人になったね!」そう言って、ふうちゃんの焦げた耳や尻尾、火傷した肉球をなめてくれました。コロ丸がなめると、すぐに元どおりに治りましたた。
コロ丸は鍋の方まで歩いて行き、どけてやると、化け猫、ツバキは元の猫に戻り、ぐっしょり濡れて小さくなっていました。
コロ丸は厳しく言いました。「こら、ツバキ!お前は長いこと猫族から迷子の届けが出ていたが、恨みの炎が強くてどうもできなかった。このたびやっと鎮火したから、こうやって迎えに来たぞ!」
ふう「え、じゃあ・・・」
コロ丸「うん、パパのところへ連れていって、親元へ戻すよ。恨みの炎が消えたのは、ふうちゃんのおかげだよ。ふうちゃんが話を聞いてあげたから、気持ちが落ち着いたんだね」
ツバキは顔を伏せて、しくしく泣き始めました。「あたし、寂しくて・・・誰にも言えなくて・・いつもひとりで・・・」
コロ丸は「寂しいからって許されることじゃないぞ!のろけたり勝手に恨んだり、まるで駄々っ子だ。そこはパパに強く言ってもらうからな!」と言ったので、ツバキはまた顔を伏せて小さくなりました。
ふうちゃんはその様子を見て、「コロ丸ちゃん、大人になったね。いつかパパみたいな立派な獅子になるのね」と感心しました。
コロ丸は嬉しそうに笑って、「うん、僕、パパみたいになるの!」そう言って、ツバキの首の後ろをぱくっとくわえ、「じゃ、ふうちゃんまたね!」と言ってツバキもろともふっと消えました。同時に、獅子の谷も、川も牡丹の花も見えなくなり・・・
ふうちゃんは、台所の隅にいて、床には鍋が転がっていました。「帰ってきたんだ・・・」
鍋以外は何も変わらない、いつものおうちでした。リビングの床にはテレビのリモコンが、ふうちゃんがテーブルから落としたままの場所にありました。
三味線はお稽古部屋に置いてありました。
寝室へ行くとお母さんの羽毛ぶとんが今までどおりにあったので、その上でごろっと横になりました。
こんなときはクーに話を聞いてもらいたいな・・・クーは最後に「きっと夢だよ」なんて言うんだろうな。今は無性にクーの背中にくっついて寝たい・・・三毛猫は深い眠りに落ちました。(続く)
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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