「ふうちゃん、ただいまー」鍵があいて、お父さんとお母さんが帰ってきました。
ふうちゃんは目を覚まして、少し寝ぼけた顔で玄関へ行ってお出迎え。大あくびをして、前足を伸ばして、後ろ足を伸ばして、横にこてっと転がって、なでなでを催促します。お父さんとお母さんは喜んで背中やあごの裏をなでてくれるので、のどをごろごろ言わせます。
お腹も減っていたのでご飯を催促すると、お父さんがごはんを出してくれました。
「あー、お鍋が転がってる」お父さんはキッチンの床に転がっている鍋を拾いましたが、中の水がなくなっていることは気がつきませんでした。
お母さんがテレビをつけると、ちょうど歌舞伎をやっているところで、「あっ、栄之丞先生が出てる!これ鏡獅子っていうの。前お稽古したんだ。髪の毛をふりまわすやつ」
テレビの中では、獅子が花道を通って舞台の中央へ出てきたところでした。
「髪を振り回すの、髪洗いっていうんだって。もうすぐ始まるよ」
テレビの中では獅子が長いたてがみをくるくる回し始めました。ふうちゃんの目はテレビに釘付け。「わー!懐かしい!これ、獅子パパがやってくれた!」
鏡獅子(五代目中村富十郎 54分45秒あたり)
三味線が徐々に演奏のスピードを上げて獅子をあおります。獅子の力強い動きもまた三味線を駆り立てます。その様を見てお客さんも拍手で応援。舞台と客席合わせたエネルギーが歌舞伎座いっぱいに広がります。
テレビを見ながら毛づくろいをしていたら、前足の指の間から小さな石ころが出てきました。「あっ、痛いと思ったら地獄の山の小石が」黒い小石をじっと見ながら、化け猫、火を上げる地獄の山、あれは夢かうつつかと思い返します。
ひどい目に遭ったけど、コロ丸ちゃんとまた会えてよかった・・・安心してだんだんまぶたが下がってきました。
「あれ、ふうちゃんまた寝始めちゃった」
歌舞伎音楽を聞きならが、うつらうつら思います。「生まれ変わったら三味線を弾いて、髪洗いの伴奏をするのもいいなあ・・・でも、今はまだ猫だから、寝るとするか・・・」(おしまい)
長い間ふうちゃん物語を読んでいただき、ありがとうございました!
本編は本日で終わり、あしたからおまけを掲載します。
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- 猫と和のお稽古にまっしぐらな私の毎日をつづります。
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