タカシは、猫が本堂へ向かうのを見て、自分もそっと後をつけて行きました。本堂の扉の隙間から覗くと、二匹が普賢菩薩様の前に座っていました。
話は猫に戻って、西円寺に住みついたミャー子とコハルの話。
タカシはこのまま若住職をやってていいのか悩んでいました。
法事は無事終わり、座がくつろいで、それぞれ話し込む人、帰る人、子供たちの元気な声が響く中、施主から西円寺の住職にご挨拶がありました。
ミャー子のついていった三毛猫はコハルといい、二匹は、これといった縄張りを持たず夏の間あちらこちらで暮らしていましたが、秋風が吹くころには西円寺(さいえんじ)というお寺のお庭に住み着いていました。
さて、今までチビを始めとする猫を中心に物語を進めてきましたが、ここでちょっと人間のお話に寄り道させてください。
くすくす笑いの方に振り返ってみると、小柄で淡い色の三毛猫がいました。
「ママ、ママって泣いてるから赤ちゃんかと思って来てみたら、こんな大きい子がべそをかいてるじゃないの。」
ミャー子は、カーテンの陰で小さくなって後悔していました。
先住猫の怒りが爆発したのは、ご飯のときでした。二匹のご飯が減らされ、それがそっくりミャー子のお皿に盛られていたからです。
ミャー子は住宅地にある小さな茂みから、ひょいと顔を出したと思ったら、ふいに車のヘッドライトが当たって、驚いてまた茂みにもぐりました。